2010/07/11

語るとき


孤独の人を孤独だと語るときいじらしく思う。
来るあてのない友を待ちわびる。
それは私自身をいじらしく待ちわびるのと同じこと。
無傷でいたいから、挨拶もせず、
私は深く語ろうともしないでいる。
小さくひとつうなずいて、
ずたずたに引き裂かれて別れたのである。
語らなかったことに腹をたてる。
這いつくばって心のかけらを拾い集める。
傷を負った振りをしている者たちがいて、
本当は誰よりも無傷なのを知っている。
佇むことの本当の意味、
わけもわからず立っているだけ。
開いた目を閉じることも忘れて、
大気をずっと見つめる。
初めてものを見る赤子のように、
悲しみは心の中を焦がしながら語る。
何の意味もない行為に堂々と人生を全うしようとしている。
そして、口元の緩みで語る。
人の流れもすっかり変わって、
私だけは変わらないと自負する。
実はその反対だというのに。
そうやって見慣れていくだけなんだ。
時代が変わってしまったと思うのは、
私自身が変わってしまっただけなんだ。
話したわけでもなく、
じっと見つめ合ったわけでもない。
すぐに横を向き、
私ではない誰かと語り出している。
どうしてあの時、
乾いた唇を湿らせなかったのか。
語らずに私は静かに眠る。
口にしないで無言で語る。
生きていた頃、
私にはわからないことが多過ぎる。
でも、語ろう。
御供  2000/10/1

0 件のコメント: