2014/06/29

山之口貘君に



ふたりがのんだコーヒ茶碗が
小さな卓のうへにのせきれない。
友と、僕とは
その卓にむかひあふ。

友と、僕も、しやべらない。
人生について、詩について、
もううんざり話したあとだ。
しやべることのつきせぬたのしさ。

夕だろうと夜更けだろうと
僕らは、一向にかまわない。
友は壁の絵ビラをながめ
僕は旅のおもひにふける。

人が幸福ととべる時間は
こんなかんばしい空虚のことだ。
コーヒが肌から、シャツに
黄ろくしみでるといふ友は
「もう一杯づつ
熱いのをください」と
こつちみている娘さんに
二本の指を立ててみせた。
   金子光晴詩集『思潮社』
PS:明日6月30日が誕生日の金子光晴さんへ
  御供  2014/6/29

2014/06/28

時代を


   

いつの時代も時代を生きる。
どんな思いであろうと生きる。
強い感情を持てるのは幸せなこと。
時代の中をゆうゆうと楽しんで生きる。
何となく好き。
何となく嫌い。
心を動かす余裕のない人が多すぎる。
それが当たり前の時代。
それを確かに認めた時代。
何もかもが変化する時代。
じっくりと自分の心の中を考える時間がない時代。
ゆっくりしていれば時代においていかれる。
止まっているともう何も見えない。
時代がどんどん追い越して行く。
スマホやインターネットには大量の情報があふれている。
うわべだけを知ったかぶり。
社会に動かされている自分に気づくことはできるのか。
ずっと好きなものがあるのは幸せ。
好きなものだけでいい。
いらないものはいらない。
時代をそんな強い感情を持って生きられるか。
時代を味方に楽しんで。
自分の好き嫌いをはっきりして生きよう。
まわりはまわりと割り切ってしまえ。
自分の中の時代を生きる。
 御供 2014/6/6