意識の最後の境、
肉体も精神も疲れているのに意地悪く眠れない夜。
すべてを癒す深い眠りに入ることを望む。
瞬間のうちに無数の生を生きたい。
幻のような私が私を見つめているのに、
いつまでも休めない。
私は私を見つめている。
体の中をすべての血が動き回る。
生への道のりの中に死への現実が見え隠れする。
私の精神はにがい笑いを持って私を悩ませる。
眠りたいのに眠れない夜。
私のすべてが限界に達する。
無数の神経が無言で叫び声を上げる。
命だけが呼吸する。
静けさが私をつつむ。
物音のひとつひとつが消えて行く。
夜は痛ましい緊張の中で忍び足で立ち止まる。
沈黙の中の私はただじっと体を横たえる。
しかし眠りは遠ざかるばかり、
神経は高鳴り頂点に達する。
恐ろしい長い夜をもてあそびながら生きることに弱気になる。
微笑みながら時間の無限から逃げようとしても、
追いかけられているかのように振り向くだけの私がいる。
疲れた魂の奥から朝の色が浮かび上がるとき、
様々な私の生が見える。
記憶は光と実存のカタチに満ちて頭の中を埋め尽くす。
私はすべてを失い朦朧と横たわっている。
カタチのない闇の中に挨拶する。
眠れぬ夜は朝の訪れを忘れたかのように自信を持たない。
記憶がそっと遠のき無の私があせっている。
私の心の無言は私の心にふれる。
現実の鏡の中を歩く。
眠れぬ夜、唯一の神に祈る。
かなえて欲しいとただ祈る。
数える。
静かに耳澄ましつつまわりの音に気を配る。
私がかつて生きてきた時の長い列に思いをよせる。
永遠の日々の中を通るのを見る。
甘い眠りを密かに待ちながら。
近づく記憶から私が私であることを確認する。
救いの綱につかまることにつくす。
御供 2000/7/22
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