2010/09/29

羊よ


羊たちはくつろぐ、
ああ、なんと幸福なことか。
羊は羊であることを知らない。
どんな生き物か知らない。
なんとうらやましいことか。
あらゆる不幸。
あらゆる災害。
あらゆる不自由を真逃れ。
どんな強烈な恐怖もすぐに忘れる羊よ。
何よりも羊は退屈を知らない。
地球の草の上で満ち足りた体を横たえる。
不満の種もなく、
年がら年中穏やかに。
同じ地球の草の上に座る私は人生を嫌い、
思い悩み、
刺激に駆り立てられ、
そこに座っていても平和と休息からほど遠い。
だが何かを欲しているわけでもなく、
不満の種があるわけでもない。
私にはわからない。
この違いが、羊の幸せが、
だが、幸せな羊たちよ。
幸せのままでいて欲しい。
羊が話すことができたら聞いてみたい。
くつろぐ生き物の心の中を、
何故無為のうちに満足するのか。
私はいつも休んでいる時も、
不安から逃げられない。
いつも幸せになれず多くの悩みを持ち。
羊たちを見るだけ。
人間たちよ、
いつ羊になることができるのか。
御供 2000/7/22

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