2010/10/05

死んで行くのは


太陽は光を発しない明かりのない国。
ずっと夜みたいなところ。
明るい昼でも亡霊のように色あせて逃げて行く。
ワインの中に忘却を求めても、
それはもうできない。
鏡を見ると髪は白くなり、自分でもわからない。
愛する人は少なくなっていく。
私は何かの向こうに死の国を眺めやる。
どこもかしこも暗く豪雨と風が吹いている。
空は灰色だが見えないと同じ蓋がかかっている。
髪の毛も髭も白くなり、
風に吹かれて銀色になびく。
眠らぬ夜がつづいているようだ。
死んで過ぎ去った時をはかることもできない。
明日、私は死んで行く。
思うほどに不思議なことだ。
目の輝きも消え。
口はあくこともない。
あつかましい好奇心にさそわれても剥ぎ取られる。
ひとりひとり死んだことを口にするが、
私には聞くことができない。
そして次の日には忘れられ、
別の日には誰かが同じような目にあうだろう。
そうしているうちには別の世界で風に吹かれて、
ひとつの金色の星が天から落ちる。
死に行くのは誰もが止められないこと。
いつかどこか、いつでもそうだ。
その人のそのひとりのために早く輝きを失った。
輝きを失った金色の星のために祈ろう。
あの星は私だった。
御供 2010/10/1

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