2010/11/15

先の声


自分の先に声が聞こえる。
私はその声の方向に近づくことで充実した時間を過ごす。
この声のない先の声は私を無造作に動かし、
私の人生の道に確かな歴史をきざみ込む。
その声は寝ても覚めても私の心のリズムとなってひびき、
私の体全体を揺さぶり続ける。
私は常にその先の声を聞き坂を登る。
この坂は頂を持たない山である。
私は生涯を坂の上から下界を見ないと知っている。
その坂は達することのできない登り坂である。
もうすでにいちばん下を体験した私は上を向いて登り上がっていくだけの道をあがって行くと決めている。
少しずつでもいいこうして生きている以上登りつづけることが、
私に托された道であることを先の声が教えてくれる。
後戻りすることなどできないこの人生の坂は、
私の目標をめがけて進む。
私はついに幸福を味わったことがない。
私はついに友を傷つけたことがない。
私はいつもいっぱいに満たされたまま、
先の声を聞き続ける。
こんな私の人生を私はかみしめながら楽しんで生きて行こう。
ひとりの人間として生きて行こう。
御供 2000/10/23

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