いつの時代も都会の片隅に小さなとまり木のBarがある。
人恋しくて集まってくる若者たち。
安くてあったかくて。
交わす会話が欲しくて。
一瞬をまぎらわす酒が飲みたくて。
はやばやに飲み、
都会の喧噪の中をバイクを駆って寄ってくる。
楽しい会話と、
未来の岸辺に立つ自分を見たくて。
人間はみなこの大都会という人間の森で、
さみしさややるせなさにひしがれている。
自由と創造が欲しい。
確かなものを見つけにやって来る。
ある者は本当のやさしさと思いやりを持って。
またある者は夜の暗やみのさみしさからのがれのために。
密に群がる蜂のようにやって来る。
そのとまり木はなくてはならない時代の玉手箱。
しっかりしたBarにつかまりたくて走ばやにやって来る。
何か目に見えないものを探したくて。
時間の先端を見つけたくてやって来る。
東京という都会に憧れて来たものの、
何も確かなものを手に入れられないまま、
このとまり木にやって来る。
家にはあたたまるものも少なくて、
家には誰も待つものもいない。
明日やることはおきまりのこと。
未来を夢見て懸命になってやることにも飽きて来た。
でも何かあるはずさ。
情熱ってやつが。
エネルギーをフル回転させてあたりを見渡せば、
同じようなヤツが同じようにあえいでる。
時おり、新しい風が吹き抜ける。
この人間の森をひとしきり風が吹く。
空にはきれいな月が輝いている。
今どこにいて、
何時なのかも忘れて生きている本当が体の中をこだまする。
私はその群れに入り、
人間の森の未開の地に踏み込む。
新しい友にさそわれて、
新しい森は私を手招きする。
中からきれいな響きの声が聞こえる。
夜のしじまで、
光が輝く。
人間であることを照らし出す。
心の中を大きな深呼吸をして、
じっと中を見つめ足踏みをする。
中にはタイム・カプセルのように、
人間たちが若さにあふれ楽しい酒を酌み交わしている。
何という驚き、
何という夜、
何という歓喜、
コレで救われる。
いつの時代にも都会には友と友を結びつける、
とまり木のような小さなBarがある。
みな人恋しくて集まって来る。
時間というはしごを踏み外し、
自分だけの時間の中におき、そしてやって来る。
日常の時計はもう誰もしていない。
ひとりになるのがとてもいやな時、みながやって来る、
とまり木というBarに。
私はこの風景をどこかで見たような既視感にかられる。
心の底の頭の裏の中に秘そんでいる何かに気づく。
どうしたんだろう。
青春の無駄使いだぞ。
思っていたあの時間にフラッシュバックする。
あのとまり木に止まっていた時間は、
とても有意義な時間だったに違いない。
だってこうも懐かしく自分を振りかえることはないから。
愛を感じて!
愛を送ろう!
御供 2003/11/12
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