2010/08/28

年を


何と不思議な奇妙なことだろう。
髪には白色が目立つようになり、
顔には皺が刻みこまれ、
茶色いはんてんができる。
そうして、眠くなり、重くなり、
体は動くことを知らない。
やがて静かに真剣に、
今までの自分がうそのようになる。
若い頃の写真と見比べる。
人間の細胞は7年に一度生まれ変わるらしい。
それで7年おきにこうも変わっていくのだろうか。
朝から夕暮れにかけて疲労が、
ビルの谷間の間の風が居座る。
それは言葉のない音の別れの歌。
なおもしばらくは忘れようとして、
でも居座り続ける。
何かわからないものが。
それからしばらくは色が失せて、
また思い出す。
疲れたようにめくるめく来る時間。
古い傷が体を痛めつけ、
古い喜びがあざやかによみがえる。
もう一度おののきながら、燃え上がり。
若い頃の自分と、
今の自分の境界をハッキリと写し出す。
やすらかにいつまでも夢見ていたい。
なおひととき考え、
考え込んでいる自分。
内気でそっとかがみ込んで行く。
返してくれるなら、返して欲しい。
あの頃は、今のことなんて知りもしなかった。
まわりに目をやっても考えもしなかった。
それは生きるのに充分に夢中で、
先のことなど考えもしなかった。
ああ、このまま終わらせないでくれ。
もう少し考える時間が欲しい。
信じたくないのだ。
でも現実だと早く知った方がいいのかもしれない。
年を重ねて見えてくるものもある。
老いが天使の翼だと考えもしたけど、
天使は私ではない。
何事も悟っていたと思っていたけど、
考えることから逃げていたのかもしれない。
すべてをのみこんで今を生きる。
実はそう悟った自分が、
ワクワク楽しくなることだって知っていた。
いろいろなことをやりすぎて、
ひとつの固まりになってしまっただけ。
細かくヒモとけば、
もうこれ以上やることも言い残すこともない。
これからのことをしっかり頭に入れ込んでいこう。
7年後をゆっくりと正しく生きて行く。
若い頃も今も同じ心で、
信じていたものを持ち続ければいいだけさ。
御供

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