2010/08/28

J・ケルアックに捧げる


<コーラス211>
おののく灼の受胎の車輪が虚空の中で回る。
人間を追い立て、
豚、カメカエル、虫の卵を追い立て、
おぞましく名付けようもない獣の群れを追い立て。
ジャングルを徘徊する。
サイを追い立て、
巨大なイノシシや雄大な象を追い立て、
ボーンとビルを追い立てて虚空を回る。
生きとし生けるものの限りなき受胎が、
意識のあっちこっちで歯ぎしりを繰り返す。
宇宙の十の方向へ向かおうと。
顕微鏡でも見えない大きさの虫けらから、
巨大な銀河光年のゾウフまで、
ひとつの精神の空を照らし出す、
哀れ肉の車輪の捕囚の身から脱して、
天国で死ぬことさえできたなら。
<コーラス216A>
畜生、こんなイメージもうたくさんだ。
バカなことやめて家に帰って寝たい。
けど家がない。
ベットもたくさん。
サックスもまっぴら。
うんざり、ベラベラ、ドンナドンナ。
負け犬たち。
だめおとこひとつぼっち。
なげきぶし。
ボーン、借金無用。
うんざりだ。
みじめな詩。
<コーラス216B>
勝手な夢で空気を満たす。
どんな欲望も湧かない時、
それが現実の自然における平和感覚の基本さ。
夢がいかに終わるかを問うて何になる。
いずれにせよ終わるものなのだから。
苦しむ赤ん坊。
誇らしげな正道の母に言ってやれ。
おまえの肥大なエゴを満たすにはあと何人必要なのかと。
さらにあと何人の赤ん坊が、
夜中、自分たちの肉がしという名の餓えた肉屋の台の上にのっていることを知って、
泣いているか、怒りの悲鳴を上げているか。
幾匹の豚が目も花もない儀式の手で逆さにつるされ、
出血によってゆっくりと死ぬのを待っているか。
この世界の大量の人間たちを、
奴隷の身から生きて解放せよ。
死から解放し、死そのものを拒絶せよ。
誕生を廃絶せよ。
大いなる不動という思考によって考えよ。
<コーラス217>
屋根のしっかりした居心地のいい小屋。
風も吹き込まない。
それだけあればいい。
正方形、頭の中には神の御姿。
田舎の風景を描いた絵の中から。
緑したたる夢想の幻影が告げる。
『われわれ茂みや緑のイメージは、キミと同じし、神秘の中から沸き上がったもの。そして神秘は気まぐれで非現実的幻想でしかも正気、そして異同的。そうなんだ。キミが生まれる前。キミは見せなかった。生まれる時、キミは見せるようになった。エメラルドの松の木を見せた。もし生まれてなかったら、見せたものは心もない。暗い海に埋められたまぶしい純白の無。あの奇妙な欺瞞のための永遠の夢だ』
マグを汚し。
だしぬくもの。
崇拝者にして戦士。
すべての緑の木々、人よ。
犬たちの群れすべて埃の中で輝き、
すべて同じになっちまった。
<コーラス219>
聖人たちよ、我が身をささげよう。
我が身はあなた方のもの。
それをどうなさる。
何をお持ちで?何も?
お持ちないのは幻影、怒り、苦痛。
しかし苦痛は修道院の外ではたぶん見つからない。
見つかるのはくちていく聖者。
聖なる十字架の元、
小鳥好きの神父は十字架の下に伏して倒れ込む。
泣き、のらりくらりと愛し合う。
彼は夜中に降参して、真っ白なヘイを越える。
悪魔たちは彼の中で笑ってる。
聖人たちよ。
あなた方の信念深い欲望のドラマに私も入れて下さい。
ダメ?
欲望のドラマなどない。
ああどうしよう。
聖人たちよ。
聖人もいない。
いない。いない。いない。
私の夫もいない。
何もない。
何もないことすらない。
<コーラス220>
青いエメラルドのかけら、
かつて燃える火成岩から生まれ、
地表の破れ目からにじみ出たもの。
久しく大地に埋もれていた光のかけら。
つまりダイヤモンドは地をおおうほどの数。
岩に埋もれた宝石のように、
財を積み上げたいのだ。
そうすれば彼を見つけた時には、
鳩はまぶしいアメジストの幻を産み落とす。
その卵は輝ける蓋の中を転げ回る。
鉱石の玉。
父らの技術。
息子たちに受け継がれる。
火と空気。
王国は常にダイヤモンド、エメラルド、真珠の上に。
乳色のゆりが編み模様を描く。
聖者なる足に踏みさかれ、
歩道の上に築かれた偉大な力の存在。
知恵の富。
愛の宝庫。
山々はそびえ、ダイヤモンドは輝く。
人は魂に乗って高く舞う。
陽光の魂。
すべての味は格別。

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