2010/08/31

J・ケルアックに捧げる


<コーラス228>
人間よ称えよ。
彼はミルクの中にあり、
檻に暮らす者。
彼のバイオリンの音楽は、
ミルクとクリームの虚白の中にある。
聞いてもいない。
奥の花弁を称えよ。
そして最もやわらかな思性の実をーーー
妄想をさざなみを称えよ。
永遠なる聖なる海を称えよ。
すでに死に、再び死して書き続ける。
私自身を称えよ。
木を称えよ、それはミルク。
根源の蜜を称えよ。
心地よい眠りを抱こう。
下なる地上の地獄の谷にいる天使たちの勇気を。
終わりなき終わりを称えよ。
地上の民の光を称えよ。
見張りを称えよ。
乳の中に住む、我が朋友を称えよ。
<コーラス229>
大洋にすごく悲しい亀がいた。
悲しそうに目をとがらし、
再び見つかるはずのない唯一回の例外を追っていた。
昔ある日の午後、
濡れた鼻ずらを水面に出した亀の、
その鼻ずらの先に浮いていた。
それこそいにしえの、
かくて亀は永遠に結ばれた。
教えてくれ僧よ。
そういうことが起こる見込みはいかほどかを。
亀は老いており、
かってに流れ七つの大洋はこの小さな亀の住処である。
どれようにも広い。
見込みは薄い。
何百、何千、何憶、何兆分の計算。
永却のひとつ。
いつか亀が放される時、
難しいのは、このカルマの地上で、
人間が人間として再び生を得ることだ。
<コーラス230>
くずれゆく愛の広大な夢場。
勇者たちのこぼれ落ちた乳。
砂岩によって揺れたる絹のスカーフ。
目隠しされ、縛り付けられた勇者たちの愛。
この世に生を許された生粋の偽善者。
指で関節を交換する。
やさしさの象の震える肉を、はげたかが引きちぎる。
精巧な頭かい骨の受胎。
黄金の希望の変わりに冷たい希望。
木造りの船体にはりつく濡れた秋の木の葉。
今はないセンチメンタルな「アイ ラブ ユウ」
性別不要の恐ろしく魅惑的で神秘的な人たち。
私たちの得る代償は、子猫たちにキス。
するみたいにうららかに。
   mitomo

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