2010/04/21

外から見た世界



自分を見つめている。
ビデオカメラで隠し撮りするように。
あるいは通りすがりの人を眺めるように。
生々しい記憶を追いかけているように確かに私は見つめている。
外から見た世界。
仕事机に向かう私自身を見つめた。
あれはまぎれもなく私であった。
その時世界はひとりだけの部屋。
ノートに向かい遠慮しながらペンを走らせている。
ペンを握った指は文字を追い、
自分の言葉で詩と一体になった。
はじめて見るのにいつかどこかで見た景色。
人はもっと外から見た世界で自分を見ている。
ただし同じで変わるものじゃない。
ひとりの安全の孤独。
関係性のない距離を楽しむ愛の一種にすぎない。
私であるところのキミはいつものように机に向かい、
黙々と原稿用紙の升目を埋めている。
一日ずっと無表情で無感動な無人間。
時々にやりと笑いながら人生という物語の主人公を演じている。
物語の進み具合ばかりを気にして背後を見失っている。
こちら側から、キミである私が見ているとも知らずに。
世界を強打しながら生きる。
肌で確かめながらしか愛せないのに当然のごとくセックスする。
だから今夜も私は私を抜け出して、
こっそり自分を覗きに行くのだ。
真夜中の机に灯がともり影ができている。
私はいったい誰?
何をしているのだろう。
私は疑問を持ちながら私を生きる。
私はそんな私を意識しながらペンを持つ。
背伸びなどしてみて、私を安心させる。
しかし、外からの世界があることすら気にしない。
私の時間はそんな時間が多い。
はじめての思考が外から見ている。
  御供 2000/12/10 11/11/8 14/4/14

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