ふたりのサラリーマンが語り合っている。
わけもわからない言葉が、
夜更けの大都会の街角にこだました。
「大都会のこれからのゆくすえは、このまま死んだように生まれて来る明日に押しつぶされて生きて行くのかな」
「世界的な不況の中で打開策はあるかな」
こんな声が聞こえて来た。
しっかりスーツを着た社会人たちだ。
片手に酎ハイを持ってコンビニエンス・ストアの前で、
煙草を吸いながら語り合っている。
私は突然聞こえて来るこの言葉に、
打ちのめされて身も心も凍りついた。
そして、何故か抱えていた荷を降ろした。
いつまでも、動けずに近くで煙草をくゆらせた。
いったいこの大都会東京で何が起こっているのか?
不安におののく社会人の実態。
コンビニの前で片手に酎ハイを持ち、
はっきりと聞こえる声で語り合っている。
社会の謎とは容易にはわからないものだ。
「そんなことはないよ」
と笑って答えた方がいいのかな。
奇妙な会話、奇妙な世界。
聞いても、聞いても、
わからない会話。
人生の悩みや喜びを通りこし、
我が道をゆけばいい。
抱いていたささやかな幸福が満ちわたるのだろう。
自分は違うと言えるだろうか?
でも、全身全霊を傾けて、
その喜びを味わうことを考える自分がいる。
それが生活の中の小さな芸術という美。
彼らふたりは口をつぐんだ。
帰路につこうとしているのだろう。
一時間半くらい電車やバスに乗って帰るのだろうか。
そして、ふたりの足音は消えて行った。
まだ、私は考えている。
煙草も3本目になっている。
このコンビニの前は吸えるが、
近くにスモーキング・エリアはほとんどない。
どんどんと楽しみの場所が消えていくようだ。
人生の楽しみはいったいなんだっけ。
もう一度、火をつけた。
でも答えは出そうもない。
また、声が聞こえてきそうだ。
私は力を振りしぼって立ち上がった。
ゆっくりと自転車を発進させた。
もう考えても答えはでないと思った。
だから、自分のおもむくままに生きようと決めた。
御供 2013/5/18
PS:写真はマイケル・コーニョリーの「サラリーマン」というアート作品
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