2010/05/15

苦悩の中で



街角にはびこる狂気。
荒れ狂う街の中の空気や風。
ごうごうと死の香りを漂わせる。
それは神が望んだことなのか?
行き交う人は挨拶を交わすこともなく。
ここの人間の中ではいつも私は異邦人。
ただあてもなくさまようばかり。
それは神の手の導きなのか?
さまよいの心のみじめさ、
それは自由につながっていると人間たちは言う。
その苦悩を見ているのか?
ああ、神はもう死んだ。
それでも私に生きろというのか。
ああ、真剣に私が悩んだ難しい問題はみな塵と消えるのか?
私の疲れた目はどこを見てもいない。
読んだ本の内容もすべて忘れようとしている。
だがまた今、私の目は癒されて元気を取り戻す。
新しく沸き立つ世界を見つめている。
美しいだけの移ろいゆく眺めは、
心の中にくっきりと書き記されている。
幾度季節がめぐり来ようとも消えることはない。
どんな風にももう吹き飛ばされはしない。
銀色の笑いを誘う面白おかしな小話。
英雄と女性の冒険。
渡り鳥の飛ぶ違うその国へと向かう。
これらのものはいったい何なのか。
君たちに教えてあげよう。
夜におぼれる夢から、
悲しくもあざやかに立ち上がる。
私はただ心の中の詩をうたっていたい。
心のすべてをふるわせるもの。
それについて考えることは黙ることではない。
天使の手が触るように心を動かして、
カナリヤの歌を歌うように詩を書く。
明るく愛らしいカナリヤの歌のよう。
心の痛みはしずまり、
古い苦悩は夢と忘却の中に沈んでいく。
それは、ただ今だけのことなのか。
一日だけのことなのか。
一生のうちのこの一日だけのことであるのか。
何と素晴らしい時間なんだ。
時間のおりなす奇跡よ。
みんな目覚めよう。
静かなときが穏やかに忍び寄る。
すべての苦悩の心は沈黙の中に沈む。
苦悩はすべて消え失せて心をまどろみの中におく。
また目覚めてみるとあたりは深い闇に包まれている。
だが、長い麻痺に閉ざされていた心が元気になる。
心は突然引き上げられて、
過去の情熱が新たに浮かび上がる。
すべてが解き放されている。
心よ、もう目覚めたのか!
心は新たな悩みを迎えるが対処は知っている。
楽しみを決断して新しい風を吹かせる。
私の心は生まれたばかりの子供のようだ。
太陽が輝いているときは、まだ大丈夫。
なのに夜になると心はおびえる。
ワインは夜だけを支配する。
風が吹き抜ける。
雨が降り落ちる中を、
ひとりあてもなく歩きつづける。
そうして、私は心に耳を傾けて聞き入る。
夜の中を手探りしながら、
街角で私は楽しい歌を歌いつづける。
昼には好ましく思えたものすべてが、
苦しみと痙攣と暗闇の中に消えていく。
輝くばかりの花をみて今をもりもりと喜びあふれる。
次の風に吹き飛ばされてしまうかもしれない。
ひとつの苦悩と創造によって甘い果実は生まれるのか。
それが熟するならば、
悩みも痛みも無駄ではなかったのだ。
いとおしい愛から目覚めても私は片目で世界をにらんでいる。
私は自分の力に病んでいる。
夢見ながら罪を犯した私は悪い夢をひとり言のように告げる。
私自身のあり方を記しているだけの詩である。
私という人間のあり方は宣告されない。
そして、この嬉しい挑戦から私を解放するのはいつなのか?
私は私で私の詩を苦悩の中で書きつづける。
   御供          11/12/5 14/8/1

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